被害者支援コラム

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大切な命を守る全国中学・高校作文コンクール入賞作品の紹介(愛知県内受賞者)

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 警察庁では毎年、大切な命を守る全国中学・高校作文コンクールを開催しています。
 応募資格は、「命の大切さを学ぶ教室」を受講し、若しくは多様な機会(身近に経験したり見聞きした事件・事故、非行防止教室の受講等)に大切な命を守ることについて考えるなどした全国の中学又は高校生(原則として現在も在学する生徒)となっています。

→参考 令和6年度の応募要領 https://www.shien-aichi.jp/topics/event/_14.html

 令和6年度は、中学校の部で、愛知学院愛知中学校(名古屋市千種区)の六鹿結花里さんが「審査委員奨励賞」を受賞されました。応募者約6400名から選ばれた、その優秀作品を紹介します。

 交通事故で娘さんを亡くされた母親を講師として招いた講演。帰宅後、その話を自分の母親に語ったところ、母親も涙したそうです。自分の母親からも「命の大切さ」を学んだ、そんな作品です。

講演を聞いて 愛知中学校 三年 六鹿結花里(むつがゆかり)さん
 
 十二月八日に、学校の講堂で成道会講演会がありました。演題は『「尊きいのち」みつめて』でした。講師の先生は数年前、名古屋市名東区の交差点で起こった交通事故が原因で、当時中学一年生のお嬢さんを亡くされたそうです。入っていたテニス部の大会の応援に行く途中での事故でした。その事故は道路を走っていた車と信号無視した車が衝突し、走っていた車が歩道まで飛ばされ、それに押しつぶされて、亡くなるという、とても痛ましいものでした。今の私より一年下の子が事故で亡くなってしまうなんて、ととても驚きました。
 私は正直、「命」について考えてもよく分かりません。ありがたいことに近親者のほとんどが健在な上に、ペットも飼ったことがないため「死」が身近になく、体験したことがないからです。なので、テレビで交通事故のニュースをやっていても「そうなんだ。怖いな。気をつけなければいけないな。」とは思いますが、あまりピンときませんでした。
でも、今回の講演を聞いて思ったのは「お嬢さん、悪ないやん」でした。朝起きて、一人でご飯を食べ、家を出て、友達と待ち合わせをしてコンビニで買い物をしてから徒歩で会場に向かうために交差点で信号待ちをする。ごくごくありふれた日常です。しかし、次の瞬間、全てが無くなってしまったのです。一体、誰がこんなことを想像できるのでしょうか。
 帰宅して、講演についての話を母にしたところ、母が静かに泣き始めました。理由を聞いてみると、もし結里花(私)がそんな事に巻き込まれたらと思うと悲しくて泣けてくる。なぜ行かせたのか、なぜ朝の見送りができなかったのかとすごく後悔するだろうからと教えてくれました。親としてしてあげたかったことや言ってあげたかった事もできていないからとも言っていました。そして、辛かっただろうなとも言っていました。子供を亡くしたのに悲しみにくれる事ができない。親切心で言ってくれる言葉に傷つく事があるのもよく分かるそうです。
 そんな母の姿を見て思いました。自分が悪い事をしていなくても事故や災害などが起きてしまう事はあります。私はまだ中学二年生で何か特別すごい事をしたわけではありません。でも、私の周りの人からすると、私が何もすごい事をしていなくても、いるだけで幸せだなと思ってくれると思います。また、そう思ってもらえるような人になりたいと思いました。今までは事故や災害は他人事だと思っていましたが、今回の講演を聞いて自分の事のように考えられるきっかけとなりました。これからは自分のためだけではなく、周りの人のためにも自分を大切にしようと思いました。話して下さった講師の先生と、招いて下さった学校に感謝します。

愛知県外の入賞作品

https://www.npa.go.jp/higaisya/sakubun/pdf/R6sakubun.pdf.pdf

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